概要
蛍光X線は、物質がX線によって励起された際に放出されるX線の一種である。
元素の内部にある電子が高エネルギーな状態に遷移することで生じ、そのエネルギーは特徴的なスペクトルとして観測される。
代表的な例である蛍光X線分析は、物質の組成や元素の同定、濃度の測定などの分野で広く利用されている。
構成
蛍光X線分析装置は、基本的にX線源、試料、検出器から構成される。X線源は一般にX線管を用い、電子ビームが高速で陽極に衝突することでX線が発生する。試料はこのX線に照射され、試料内の元素が蛍光X線を放出する。最後に、検出器が放射されたX線を検出し、その強度やエネルギースペクトルを分析する。
特徴
蛍光X線は、吸収スペクトルによって元素ごとに特有のエネルギーを持つため、元素の同定や濃度の測定に非常に有用である。また、非破壊的な分析手法であり、試料を傷つけることなく解析が可能である。さらに、微量の元素でも検出できる高感度が特徴であり、さまざまな分野で広く利用されている。
歴史
蛍光X線分析の歴史は古く、初期の研究は19世紀後半にさかのぼる。しかし、本格的な分析技術としての発展は20世紀初頭になってからである。1913年に、モーズリーとマンの研究が、蛍光X線の物質中の元素の同定に成功し、この分野の基盤が築かれた。その後、装置の改良や検出技術の進歩により、蛍光X線分析はより高精度かつ広範囲な応用が可能となった。現代では、材料科学、地質学、環境科学などのさまざまな分野で幅広く利用されている。
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